1972年頃のコシノジュンコ。絵画館前にあったサンローラン前にて

「ケンゾー」の高田賢三や「ニコル」の松田光弘、あるいは「ピンクハウス」の金子功。いわゆる文化服装学院“花の９期”の才能たちを抑え、コシノジュンコは1960年、史上最年少の19歳で「装苑賞」に輝いている。そしてその勢いのままに駆け抜けた恐いもの知らずの20代。彼女もまた、青山に魅せられたひとりだった。

VANの青山移転から２年が過ぎた1966年、最初に開いたブティックは外苑前の「コレット」だった。主な仕事はタイガースをはじめとするGS（グループサウンズ）の舞台衣装。最盛期には６つのグループを掛け持ちするほどの売れっ子ぶりだった。人呼んで「サイケの女王」。斬新と最先端が彼女の代名詞となった。

ところでコシノジュンコという存在は、当時、トラッドの王道を示したVANのカウンターカルチャーと目されることが多かった。しかし方向性はともかくとして、彼女が青山を目指した理由のひとつはVANへの憧憬であり、両者の（石津家との）交流はいまだ深い。また後年のインタビューでは、次のように語り、VANとの奇縁を懐かしんでいる。

「茅ヶ崎のパシフィックホテルで知り合った布施明さんが、僕はVANによく行くから今度お店に寄るよって。それで布施さんの洋服を作るようになったの。それを見たナベプロの渡辺美佐さんが関心を示して、今度新しいGSをデビューさせるから衣装を作ってほしいって。それがタイガースだったわけ。だからすべてはVANから流れてきた話（笑）。」